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患者さん丸ごとつかまえる

もてはやされる最先端歯科技術

インプラントや審美歯科など最先端の歯科技術を謳った歯科的介入が相変わらず大はやりです。

歯科医師数の過剰が叫ばれ、それぞれの歯科医院が生き残りに必死になっている時代なので、経営のために高額な自費治療を勧める歯科医が多くなるのは仕方がないことなのかもしれません。

しかし、その治療が多大な問題を引き起こしているのも事実です。

 

治療の失敗は凄惨を極める

最先端の歯科技術に基づいた歯科治療がうまくいけばよいのですが、治療の失敗や経年的な変化が以前には考えられなかったほどの悲惨な状況をつくり出してしまいます。

鬼の牙のように口の中に突き出た役に立たないインプラント、矯正治療によって恐ろしいほど大幅に吸収してしまった歯根、マージンが醜く露出してしまったセラミッククラウン。

種々の補綴物が装着され、どこで噛んでよいか分からなくなってしまったデュアルバイトの口腔。

近年になって開発された技術や材料を用いて行われた歯科治療の失敗は凄惨を極めていますが、これらの失敗症例は決して公表されず、闇から闇へと葬られているのが現実です。

科学の粋を集めた原子力発電がフクシマで悲惨な結果を招いたように、高度先端技術といわれたインプラントや矯正治療や審美補綴のトラブルが絶望的な状況をつくり出しているのです。

 

ミクロの普遍性はマクロでは普遍的でない

この失敗は、多くの歯科医が大学で教わった内容はすべての人の口に「普遍的」に適用できる、と勘違いしていることにあるのではないかと私は考えています。

「普遍性」というのは、「いつでも、どこでも」そのことが当てはまるということです。

しかし、大学で教えていることがすべての歯科治療の局面を網羅しているわけではありません。

象牙質にまで達したむし歯は進行するので、細菌に侵された部分を除去して充填した方が良い、ということには普遍性があります。

だからといって肺気腫で呼吸もままならずベッドに横たわっている人のむし歯の治療をベッドサイドでする必要はないでしょう。

「象牙質むし歯は治療した方が良い」という「普遍性」は、その人のおかれた状況やその人の考え方によってとるに足らない問題になってしまうわけです。

 

 

インプラントがすべての欠損に適応なわけではない

歯科医療を行う上で、大学で習った歯科医学の普遍性が『いつでもどこでも』当てはまるわけではないということを頭に入れておかないと、歯科治療を非常に狭い範囲で考える歯科医になってしまいます。

欠損があればインプラントを入れなければいけないわけではありません。

だれもが、セラミックの白い前歯を入れる必要はありません。

「モノ」を口の中に適用することが歯科治療であると考えている歯科医の治療を受けると、口の中は高額な補綴物に置き換えられたけれど、「具合が良くない」状態になってしまいます。

 

患者さんを丸ごとつかまえる

科学における「普遍性」というのは複雑で多様な私とそれをとりまく環境の中から、『どこでも、だれでも、いつでも』そうなるものを取り出したもので、全体の中からみればほんの少しの部分なのです。

その取り出したものがほんの一部分であっても、それを原理とした『科学』が莫大な恩恵を我々に与えてくれたために、私たちはそれがすべてであると勘違いしてしまっているわけです。

現代の歯科医療では、「普遍性」からこぼれてしまったことにこそ、注目する必要があります。

具体的に言えば、その人の生活であり、考え方であり、さらにその人をとりまく環境です。

私に歯科治療の何たるかを教えてくれた片山恒夫という歯科医師は『患者さんまるごとつかまえよ」と口癖のように言っていました。

むし歯の穴や歯周ポケットだけでなく、その人すべてを理解して歯科治療を行いなさい、ということです。

歯とその周辺のミクロの世界と、患者さんその人を取り巻く環境、マクロの世界の両方に目を向けることで、歯科治療は初めて成功することになります。

歯や歯周ポケットや欠損部だけに注目しているととんでもないことになってしまいます。

 

関連図書

歯周病の新常識

片山式歯周治療と安保免疫論 P115

 


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