咬合支持
当たり前の話ですが、上下の歯は噛み合わせることによって機能します。
この噛み合わせを咬合支持(こうごうしじ)と言います。
咬合支持は一度失ってしまうと、二度と獲得することはできません。
ブリッジを入れても咬合支持は回復できない
歯が抜けてしまった場合、欠損部にブリッジをいれたり、入れ歯をいれたり、インプラントを埋入したりして、機能回復をはかります。
しかし、ブリッジを入れたからといって、咬合支持を回復できるわけではありません。
ブリッジや入れ歯を入れても、新しい歯が生えてくるわけではないので、その部に加わる力はブリッジや入れ歯を支える歯が受け持つことになります。
それらの歯が元気なうちは良いのですが、時間経過とともに歯が弱って、相手の力を支え切れなくなると、口の中の崩壊がはじまります。
ブリッジがトラブルを起こすと悲劇がはじまる
6歳臼歯(第一大臼歯)を一本失っても、前後の健全な歯(第二小臼歯と第二大臼歯)を削ってブリッジにすれば十分な機能回復を図ることができます。
しかし、時間経過とともにそのブリッジの中がむし歯になったり、歯周病が進行してしまうと、悲劇が始まります。
特に第二大臼歯を失ってしまうと、もう一度ブリッジを作るというわけにはいかなくなります。
第二小臼歯の場合はブリッジjにすることは可能ですが、犬歯から第二大臼歯までの5本をつなぐ大がかりなブリッジになってしまうでしょう。
しかもそのブリッジは最初のブリッジに比べて”持ち“は悪く、良い歯を削る割合も増えてしまいます。
費用も以前よりかさみます。
犬歯のトラブル、そして咬合崩壊
さらに、この犬歯を巻き込んだブリッジがトラブルを起こすと、悲劇の度合いは増してきます。
犬歯は口の健康を守る最後の砦で、犬歯を失ってしまった補綴処置は力のコントロールがうまくいかず、咬合崩壊という最悪の事態に突き進んでいきます。
咬合崩壊というのは咬合支持が無くなってしまった状態ですが、咬合崩壊を起こしてしまうと、歯は残っているけれど入れ歯をいれてもまったく咀嚼できないという最悪の状態に陥ってしまいます。
このような崩壊過程の始まりは、最初に抜いてしまったことにあります。
とにかくなるべく抜かないようにしてほしい。それが私の願いです。
見た目の良さや快適さだけを求めない
万が一、第一大臼歯を失ってしまった場合は、健康な歯を削らないことを最優先にすべきだと思います。
噛み心地や見た目の良さや快適さばかり求めて、まっさらな歯を丸削りしてしまうと、将来のトラブルを自らつくりだしてしまうことになります。
一本の歯を失ったら、次の犠牲者を出さないためにはどのようにするべきかを考えるべきです。
むやみに抜かないように、健康歯質は削らないようにお願いします。
私は補綴物を入れずに、残った歯を労わりながら使っていくのも一つの手ではないかと考えています。
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