歯科的介入は弊害を伴う
現代社会では医療技術を画一化し、大量に消費する構造ができあがっています。その結果、治療自体を商品として扱う傾向がどうしても強くなってしまいます。(社会的医原病ー歯科治療の新常識)
特に歯科治療はクラウンやインプラントなどの「もの」を口の中に入れることがその治療の主体となるので、それらの商品を購入して口に装着してもらうことが、歯科医療の目的であると勘違いしてしまいがちです。
患者さんはよく噛めるもの、見た目にすぐれた「もの」を求め、歯科医はそのニーズやデマンドに答えようと悪戦苦闘します。
しかし、より審美的な修復物は健康なエナメル質を大量に削除します。よく噛める補綴物は安易な抜歯を加速させ、残存歯に負担をかけその寿命を縮めてしまいます。
一時的な咀嚼機能の回復は、削る必要のない歯を削り、抜かなくても良い歯を抜いてしまうという、弊害を生みだしてしまうわけです。
ベストの治療は一人ひとり異なる
ところが、この弊害というのは「生涯にわたる口の健康」という観点からみれば、害があるというだけで、削ったり抜いたりすることに「生涯にわたる口の健康」以上の価値があると考える人にとっては弊害とは言えなくなります。
「楢山節考」という映画に主演した女優は役作りのために健康な歯を全部削ってしまったと言います。老人役のために上下の歯を10本(?)も抜いてしまった昭和の怪優と異名をとる役者もいます。
彼らにとってその作品にかける意気込みが、健康な歯やエナメル質を残すことより重要だったことは想像に難くありません。
その人にとってどのような歯科的介入が一番良いのか、それは一人ひとり違います。これが、歯科医療と一般医療の大きな違いです。
歯のことは分からないからといって「一番良いやり方でお願いします」と担当歯科医にすべてをゆだねてしまうのは決して好ましいことではありません。自分が歯科医療に何を求めているのかをはっきりさせ、歯科医院にでかけることが重要になります。
歯周病の新常識 小西昭彦 阿部出版 |
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